生まれてくる子供のために出来るデンタルケアーは主に2つあります。
妊娠中にできる事は、お母さん自身が身体の状態に注意することです。
まずは、それぞれについて、詳しく解説していきたいと思います。
そして、妊娠中に上がる虫歯・歯周病のリスクについて、その予防方法について解説していきたいと思います。
目次
これから生まれてくる赤ちゃんは、お口の中に細菌がいない状態で生まれてきます。
しばらくしてから、次第にお口の中に様々な細菌が定着していきます。
赤ちゃんにとって、一番身近な存在であるお母さんのお口の状態が悪く“虫歯”や“歯周病”に罹患していると、活発な“虫歯菌”や“歯周病菌”が赤ちゃんのお口の中にうつりやすくなるのです。
特に“虫歯”は、歯が生えた時点から、罹患する可能性のある、子供に多い病気なので、注意が必要です。
お母さんに虫歯が多い場合には、子供も虫歯が多い傾向になります。
まずは、お母さんのお口の中を健康に保つ事が大切です。
生まれてくる赤ちゃんは、平均して生後9か月位に、初めての乳歯が生えてきます。
そして、6歳頃から永久歯への生え変わりが始まります。
少し先の事のように感じるかもしれませんが、実は、乳歯・永久歯共に、胎児の段階から、歯の元となる組織は成長を始めています。
乳歯の歯の元となる歯胚(しはい)という組織は、妊娠初期の段階から作られます。
そして、永久歯の歯胚の一部も妊娠中に作り始められます。
お母さんの身体から栄養をもらって成長していくので、お母さんの健康状態・栄養状態を良好に保つ事は、生まれてくる赤ちゃんの“歯”にとっても大切な事です。
もちろん胎児の他の身体の組織の成長にとっても、お母さんからの栄養は大切です。
悪阻がひどい方は、食事を摂る事が難しいかもしれませんが、出来る限りバランス良く栄養素を摂るように心掛けましょう。
妊娠中は、身体のいたる所で様々な変化が起きます。お口の中の環境も同じです。
お口の中も様々な変化が起きるため、虫歯や歯周病になりやすい環境になってしまいます。
胎児に具体的にどのような変化が起きるのか解説していきたいと思います。
妊娠中は、ホルモンの影響などにより、唾液の量が減り、粘り気のある唾液の質に変化します。
唾液には、もともと虫歯をつくりにくくする作用が備わっていますが、唾液の量と質が変化する事により、虫歯菌が活動しやすい状態になります。
唾液による“抗菌作用”“酸を中和する作用”“再石灰化作用”が働きにくくなり、虫歯リスクが高くなります。
悪阻がひどい場合、歯みがき自体が困難になる場合があります。
「歯ブラシを口の奥に入れると吐き気がしてしまう」「歯みがき粉の匂いや味で気持ちが悪くなる」などです。
妊娠後期に、胃が圧迫され一度に食べられる量が減ってしまい、食事回数が増える事があります。
また、妊娠初期に“食べつわり”の影響により、常に食べていないと気持ちが悪いという場合もあります。
間食など食べている時間が長くなると、お口の中の酸性度は、中性から酸性に傾く時間が長くなります。
そうなると虫歯を作りやすくなります。
妊娠中には、虫歯になりやすい口腔内環境になりますので、普段以上に虫歯予防が大切になります。
生まれてくる赤ちゃんの虫歯予防にもつながりますので、積極的に虫歯予防をするようにしましょう。
効果的な虫歯予防方法には、次のようなものがあります。
妊娠中は、虫歯菌が繁殖しやすくなるので、より丁寧な歯みがきが必要です。
妊娠中は仕事をしていない場合もあると思うので、1日1回は、ゆっくり椅子に座って時間をかけてみがくのも良いでしょう。
歯と歯の間は、虫歯になりやすい箇所ですので、歯ブラシ以外にも、デンタルフロスや歯間ブラシを使用するのがオススメです。
悪阻により、歯みがきが苦痛の場合には、不快感の少ない手前の歯だけみがいたり、歯みがき粉をつけずにみがくなど工夫して、少しだけでもみがけるようにすると良いでしょう。
妊娠後期で少しずつしか食べられない場合、悪阻で食べていないと気持ちが悪い場合があると思いますが、間食したい場合でも、出来る限り甘いものを控えるようにしましょう。
食べつわりにより、何かをずっと口にしていたい場合でも、甘いアメなどをずっと舐めているのはとても危険ですので、糖分の少ないもので出来るだけ代用しましょう。
フッ素配合の歯みがき粉は、歯の質を酸に溶けにくくし、再石灰化作用を促進させ歯を強くします。
毎日の歯みがきに利用すると良いでしょう。
普通に使用するフッ素配合の歯みがき粉は微量なので、胎児への影響はありません。
マウスウォッシュは、悪阻などにより歯みがきが困難な場合などに、利用するのもオススメです。
歯ブラシを使用しないと汚れは完全に除去する事はできませんが、何もしないのでは無く、マウスウォッシュで取れるおおまかな汚れだけでも除去するのが良いでしょう。
妊娠中も歯科医院を受診する事ができ、様々な治療を受ける事ができます。
虫歯がある場合には、虫歯のまま放置しないようにしましょう。
虫歯があると、活発な虫歯菌が繁殖しますので、生まれてくる子供にも感染しやすくなります。
それに、出産前後に虫歯の痛みが出ると、とても大変です。治療は安定期がおすすめです。
お口の中に何も問題が無いと感じていても、妊娠中に定期健診を受けるようにしましょう。
自治体によっては無料で“妊婦歯科検診”を受診できる所もありますので、確認してみてください。
いかがでしたでしょうか。
生まれてくる子供の歯を守るためには、妊娠中からお母さん自身ができる事が2つあります。
妊娠中は、虫歯や歯周病のリスクが上がります。特に虫歯は、子供に多い病気であり、お母さんに虫歯が多いと、子供にも多くなる傾向にあります。
まずは、お母さん自身のお口の中を健康に保つようにしましょう。
そして、妊娠中に1度は歯科受診をするようにしましょう。
虫歯がある場合には、治療を済ませておくようにしましょう。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医