歯周病は、初期の段階では、自覚症状の少ない病気です。しかし、よく注意すれば初期の段階でも気付くことができます。
歯周病を初期の段階で、気付くためのポイントを、詳しく解説していきたいと思います。
目次
歯周病は、“サイレントディシーズ(静かなる病気)”とも言われ、初期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。
そのため、気がつかないまま放置してしまい、気がついた時には、重度にまで進行してしまう事があります。
はじめに、歯周病の進行程度別に症状を説明したいと思います。
歯周病になる手前の状態で、炎症が歯ぐきに限局しています。
歯を支える骨(歯槽骨)は、まだ影響を受けていません。
歯ぐきが赤く腫れ、歯ブラシが当たると出血をする事があります。痛みが無いので、症状に気がつきにくいです。
歯ぐきの炎症が進み、徐々に歯槽骨が溶かされ始めます。
それに伴い、歯と歯ぐきの間の溝である“歯周ポケット”が深くなり、歯周ポケット内にプラークや歯石が溜まりやすくなります。
歯ぐきが赤く腫れ、歯ブラシが当たると出血します。冷たい水が凍みる事があります。
この時点でまだ、痛みはほとんどありません。
歯ぐきの炎症がさらに進み、歯槽骨の破壊も進み半分程度になり、歯周ポケットもさらに深くなってきます。
歯ぐきの腫れが大きくなり、出血も増えます。歯ブラシを当てると痛みを伴う事があります。
歯周組織の破壊が進んでいるため、膿が出るようになり、口臭もひどくなります。
歯が浮いたような感じがし、硬い物を噛むと痛む事があります。
歯周組織の破壊がかなり進んでいるので、適切な治療を受けずにいると、悪化していく一方です。
早期に治療を開始する必要があります。
ここまで進行しても、ズキズキと継続した痛みが無い事があります。
さらに進行すると、歯槽骨がほとんど溶かされ、歯がグラグラと動くようになります。放置しておくと、歯が抜けてしまいます。
歯ぐきが赤く腫れ、膿が出るようになり、歯ぐきからの出血もひどくなります。強い口臭があります。
物を噛むと痛みが出る事が多く、食事をするのが不自由になります。
歯槽骨が破壊された事によって、歯ぐきが下がり、歯が長くなったように感じ、歯の隙間が目立つようになります。
日頃から、セルフチェックのポイントを把握し気に留めておくと共に、毎日の歯みがきの時に、鏡を見てチェックをするようにしましょう。
次の項目の中に当てはまるものがある場合には、歯ぐきに炎症が起きている可能性があります。
歯肉炎の段階から見られる症状のため、注意する事で、早めに歯ぐきの炎症に気がつく事ができます。
歯肉炎の段階から見られる症状です。
鏡を見て定期的にチェックをするようにしましょう。
特に歯と歯の間の部分の歯ぐきが、腫れているかどうか判別しやすいです。
歯周病菌が増殖すると、みられる症状です。
歯周病菌が増殖すると、歯周病菌が臭いを発するため、口臭がするようになります。
歯周病が進行し、膿が出るようになると、口臭はさらに強くなります。
歯ぐきが炎症を起こしていると、ムズ痒く感じる事があります。
歯周病が軽度の段階から見られる事があります。風邪をひいている時や、疲れやストレスが溜まっている時など、免疫力が低下している時に現れやすくなります
歯周病で歯周組織が炎症を起こすと、歯が浮いたように感じる事があります。
この症状も免疫力が低下してくると、現れやすくなります。
歯周病が中程度まで進行してくると、歯ぐきが下がり、歯と歯の間に物が詰まりやすくなります。
ただし、詰め物の不適合でも、物が詰まりやすいので、一概に歯周病だとは言い切れません。
歯周病が中程度まで進行してくると、歯周組織の炎症が強くなり、硬い物を食べる時に痛む事があります。
この症状が出てくると、歯周病が重度にまで進行している可能性があります。
これら様々な症状が、セルフチェックする事ができる症状です。
人によって現れ方は違い、いくつかの症状が組み合わさって現れます。
これらの症状が見られたら、早めに受診をするようにしましょう。
喫煙者の特徴で、歯周病の症状が現れにくい事があげられます。
毛細血管が収縮し、歯ぐきが厚く硬くなるため、歯周病が進行していても、歯ぐきや出血が見られない事があります。
そのため、歯周病を発症しても、気がつかずに放置してしまう事が多いのです。
喫煙は、歯周病を発症・進行しやすくする要因の1つです。歯ぐきへの酸素の供給を妨げ、毛細血管の収縮により、歯ぐきが酸欠・栄養不足の状態になるのです。
喫煙をしている限り、歯周病は治らないとも言われますので、歯ぐきを守るためには、禁煙が必要不可欠です。
日頃のセルフチェックだけでは、歯周病の症状に気がつかない事があります。
歯科医院で行う歯周病チェックは、歯の1本1本に、専用の器具を当て、歯周ポケットの深さを測定、出血のチェックを行います。
必要であれば、レントゲンを撮影し、歯槽骨の状態をチェックします。
全く問題の無い場合でも半年に1度は、定期検診を受ける事をおすすめします。
これが、歯周病につながる異常に早く気がつき、進行しないように予防をする近道です。
いかがでしたでしょうか。
歯周病は、初期の段階では、自覚症状が少ない病気ですが、毎日のセルフチェックと定期検診で、歯ぐきの異常を早く発見する事が可能です。
初期の段階で気がつく事ができれば、クリーニングなどの適切な歯周病予防により、進行を防ぐ事ができます。
歯周病は、歯槽骨の破壊を伴いますので、いくら炎症を抑え、歯周病の進行を食い止める事ができても、一度破壊された歯槽骨は元に戻りません。
歯肉炎の段階で、炎症を抑える事が大切です。
歯ぐきを長く健康に保つために、歯周病のセルフチェク・定期検診をはじめましょう!
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医