「入れ歯=保険診療」のイメージを持っている人が多いと思いますが、
入れ歯の費用を調べようとした時、稀に高額な費用を目にした経験のある人もいるでしょう。
それは自由診療の入れ歯であり、入れ歯には保険診療のものと自由診療のものがあるのです。
もちろん、患者さんは好きな入れ歯を選択することができるため、
ここで改めて保険診療の入れ歯と自由診療の入れ歯の違いについて解説していきます。
同じ入れ歯でもなぜ保険診療と自由診療に分かれるのか、まずはその境界線を知っておきましょう。
保険診療とは健康保険が適用となる医療であり、文字どおり健康目的であることが保険適用の基準です。
そこで、次の医療行為に注目してください。
豊胸手術
永久脱毛
脂肪吸引
これらはいずれも医療の一つですが、ただその目的は美容効果の向上であって病気を治すためではありません。
そのためいずれも自由診療として扱われ、健康保険ができないのです。
歯科の場合も同様で、例えばホワイトニングは完全に審美目的のため自由診療になりますね。
では、次の医療行為はどうでしょうか。
インプラント治療
セラミック治療
インプラントは歯を失った時に行う治療、セラミック治療はセラミックの詰め物・被せ物で処置する治療、
歯を失うことへの対処も、詰め物・被せ物の処置も健康のために必要であり、
そのため健康保険適用となるイメージがありますが、実はこれらの治療は自由診療になるのです。
なぜなら、健康保険は健康目的…すなわち病気を治すための必要最低限な治療と基準が定められているからで、
インプラント・セラミックにおいては必要最低限以上の特徴を持っているからです。
つまり、病気を治すための必要最低限の治療であるか、そうでないかが保険診療と自由診療の境界線になります。
上記の説明から、入れ歯に保険診療・自由診療の2つのタイプが存在する理由が分かります。
保険診療の入れ歯は必要最低限の品質であり、自由診療の入れ歯はそれ以上の品質であるということです。
では、具体的に自由診療の入れ歯の特徴をまとめてみます。
保険診療の入れ歯では、維持装置は残った歯を囲む状態で固定しており、
装着中の違和感・会話時に維持装置が見えるなどの問題があります。
一方、自由診療の入れ歯の維持装置は残った歯に負担をかけず、
さらに人からも見えない仕様になったものが存在します。
保険診療の入れ歯でも歯の部分の審美性にはこだわっていますが、
選択できる色・形に限りがあるため、人によっては不自然でバランスの悪い見た目になってしまいます。
一方、自由診療の入れ歯では歯の部分に使える色・形の種類が豊富であり、
その人に最も合った自然な人工の歯を再現できます。
歯肉の部分においては保険診療の入れ歯も完成度が高く、
しっかりとした作りで装着感も良いため、装着時に不自由さを感じることはないでしょう。
ただ、形態の種類はそれほど豊富ではなく、一方で自由診療の入れ歯の場合は形態の種類が豊富、
汚れにくいさ・装着の良さに加えて豊富な形態によって審美性が高まります。
保険診療の入れ歯では義歯床が割れやすく、その対処として分厚く仕上げられています。
しかし、分厚くなっていることで熱を感じにくく、食事の際に温度・味覚を感じづらいのが欠点です。
一方、自由診療の入れ歯の義歯床は入れ歯が落ちづらく、
さらに薄い金属のものを選択することで食事における不自由さも解消されています。
保険診療の入れ歯と自由診療の入れ歯、2つの選択肢においてどちらがおすすめなのでしょうか。
これについては、一概に一方をすすめることができず、患者さんの要望で決まります。
特徴だけで比較すれば、言うまでもなく自由診療の入れ歯がおすすめです。
しかし、自由診療の入れ歯は費用が高くなりますし、
審美性・機能性ではなく費用の安さを最優先に考える人もいるでしょう。
仮に患者さんが審美性・機能性にこだわりを持つなら自由診療の入れ歯をおすすめします。
一方、費用の安さを優先する患者さんなら保険診療の入れ歯をおすすめします。
要するに、患者さんが入れ歯に対して何を求めて何を重視するのか、
その答えによって保険診療の入れ歯をすすめることもあれば、自由診療の入れ歯をすすめることもあるのです。
いかがでしたか?
最後に、自由診療の入れ歯についてまとめます。
1. 保険診療と自由診療の境界線 :「病気を治すことを目的とした必要最低限の治療」が基準になっている
2. 自由診療の入れ歯について :維持装置・人工の歯・人工の歯肉・義歯床において違いがある
3. 入れ歯は保険診療・自由診療のどちらがおすすめか :患者さんの入れ歯に対する要望・こだわりで決まる
これら3つのことから、自由診療の入れ歯について分かります。
入れ歯には保険診療のものと自由診療のものがあり、後者は審美性・機能性において優れています。
一方、前者には費用が安いというメリットがあり、入れ歯には2つの選択肢があることを知っておきましょう。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医