インプラントとは、歯を失った場合に、顎骨に人工の歯根を埋め込み、歯の機能を回復する治療方法です。天然の歯のような使用感が魅力です。
今回は「インプラント」の構造について、詳しく解説していきます。
目次
インプラントは、大きく分けて「インプラント体」「上部構造」「アバットメント(支台)」の3つのパーツに分かれています。
顎骨の中に埋め込まれる人工歯根部分です。「フィクスチャー」とも言われます。生体親和性の高いチタンまたはチタン合金でできています。他分野では、人工関節やペースメーカーにも使用される金属で、長期間体内に存在していても安全です。
ネジのような形状をしており、直径3〜5mm、長さ6〜18 mmです。
歯ぐきから上に出ている、人工歯の部分です。
人工歯の材質は、セラミック・プラスチック・ハイブリッドセラミック・金合金・ジルコニアなど、様々なものがあります。審美性や強度など希望に合ったものを選択できます。
アバットメントとは、ネジ式になっており、インプラント体と上部構造を連結させるパーツです。ただ単に、連結させるだけでなく、噛む力や方向の補正をし、インプラント体や上部構造を保護する役割も担っています。
現在、日本では様々なメーカーから、20種類以上のインプラントが販売されています。種類によって、インプラントのタイプや形状に若干の違いが見られます。いくつかの種類を例に紹介します。
インプラントには、インプラント体とアバットメントが一体化した「ワンピースタイプ」とインプラント体に後からアバットメントを連結する「ツーピースタイプ」があります。それぞれメリットとデメリットがあります。
・ワンピースタイプのメリットとデメリット
手術回数が少なくて済むので、身体への負担が少なくて済みます。また、パーツが少ない分、費用が若干安くなるというメリットがあります。
一方で、デメリットも存在します。インプラントを埋め込んだ方向により、人工歯の形態が限られてしまう他、トラブルが発生した時には、インプラント全体を撤去しなくてはならないというリスクがあります。また、顎の骨の厚みによっては適用できない場合があります。
・ツーピースタイプのメリットとデメリット
ほとんどの人に利用できる方法で、アバットメントや人工歯の選択肢が広いのがメリットです。また、アバットメントを介しているため、強い衝撃を受けた時にインプラント体にかかる負担が少なくなります。
一方で、手術回数が多く身体への負担や費用負担が大きい、ネジが緩むリスクがある、というデメリットがあります。
インプラント体の形状は、ネジ式になった「スクリュータイプ」と、円筒状になった「シリンダータイプ」があります。一般的なインプラントでは「スクリュータイプ」が主流となっています。「スクリュータイプ」の方が、顎骨と接触する面積が広くなるため、よりしっかりと骨への固定を得られやすくなります。
骨への結合をより早く、強くするために、メーカーによりインプラント体に様々な表面処理を行っています。表面処理の方法・形状は様々で、ブラスト処理・酸処理・酸化処理・機械研磨処理などを組み合わせて行われています。
インプラント体と天然歯では、周囲骨との結合の仕組みが異なります。
天然歯は、「歯根膜(しこんまく)」という組織を介して、歯根と骨が結合しています。歯根膜は、噛んだ時にかかる圧力を感知し、噛む力をコントロールします。歯に加わる過剰な力を和らげて、骨や顎にダメージが及ばないようにしています。
一方、インプラントは、周囲に歯根膜という組織がありません。インプラント体が直接、顎の骨と結合しています。そのため、力がダイレクトに加わってしまいます。噛み合わせに問題がある場合や、歯ぎしりなどの癖がある場合には、慎重な治療が必要です。
インプラント体がしっかりと骨と結合し、骨や顎に過剰な負担がかからないようにするために、様々な構造のインプラントが考案され、販売されています。
いかがでしたでしょうか。最後にインプラントの構造についてまとめます。
【インプラント構造 3つのパーツ・パーツの種類】
・インプラント体
フィクスチャーとも言われる「人工歯根」部分です。生体親和性の高いチタンまたはチタン合金でできています。
インプラント体の形状は、ネジ式になった「スクリュータイプ」と、円筒状になった「シリンダータイプ」があります。現在では、「スクリュータイプ」が一般的です。
インプラント体が、より早く強固に骨と結合するために、メーカーによりインプラント体には様々な表面処理がなされています。
・上部構造
歯ぐきから上の「人工歯」部分です。材質は、セラミック・プラスチック・ハイブリッドセラミック・金合金・ジルコニアなどがあります。
・アバットメント(支台)
インプラント体と上部構造を連結させるネジ式のパーツです。
インプラント体に後からアバットメントを連結する「ツーピースタイプ」と、最初から一体化した「ワンピースタイプ」があります。
インプラントは主に3つパーツからなっていますが、パーツには様々な種類があります。メリットやデメリットを考慮した上で、ご自分のお口に合ったものを、歯科医師と一緒に選択していきましょう。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医