歯を失った人が入れ歯にすれば、今までと違って再び噛めるようになります。
しかし、初めて入れ歯を使う人からすれば、そんな期待よりも不安の方が大きいのではないでしょうか。
何しろ口の中に人工物を入れるわけですし、今後は毎日ケアもしなければなりません。
そこで、初めて入れ歯を使う人に向けて、使用上においての注意点をお伝えします。
目次
入れ歯を使用する上で最も注意すべきなのは食事です。
入れ歯の欠点として「外れやすい」と挙げる人がいますが、これは噛み方に問題がある可能性が高く、
シーソー状の入れ歯は一方だけで噛む癖があると、もう一方が浮き上がってしまうのです。
このため、食事の時は左右の歯で均等に噛むようにしてください。
まず、あまり硬いものを食べることはできず、これは入れ歯の咬合力が天然の歯に比べて弱いためです。
このため、食材も噛みやすい大きさに切る必要がありますし、
入れ歯と粘膜の間に食べカスが詰まることのないようにしなければなりません。
総入れ歯の場合に言えることですが、入れ歯はその仕様上、温度を感じにくくなっています。
このため、本来なら熱くて飲食できないものも平気で飲食できてしまい、
熱さへの感覚が鈍くなってしまうため食事の時は火傷に注意しなければなりません。
入れ歯は天然の歯同様に毎日ケアが必要で、それを怠ると入れ歯の劣化や健康面に問題をもたらします。
せっかく歯を手に入れたことで就寝時も入れ歯をつけておきたい気持ちは分かりますが、
入れ歯をつけっぱなしにすると粘膜に炎症が起こりやすく、
1日数時間は粘膜を休ませてあげなければなりません。このため、就寝時は入れ歯を外しておきましょう。
入れ歯にとって天敵となるのが乾燥で、入れ歯は乾燥すると歪みなどの変形を引き起こします。
このため、外している時は必ず入れ歯を水につけておきましょう。
ちなみに殺菌効果を考えて熱湯につける人がいますが、これも変形の原因になるので注意してください。
どんなに丁寧に使用しても、その過程で人工物は劣化していきます。
入れ歯もその例外ではなく、使用する中で入れ歯の高さが合わなくなることもあるでしょう。
このため、定期的にメンテナンスを受けてその都度入れ歯を調整してください。
入れ歯の破損や紛失には注意が必要で、再製作となると余分なお金がかかってしまいます。
よく聞くのが、洗浄中にうっかり入れ歯と落としてしまうケースです。
充分な耐久性を持っているものの、入れ歯は落下させると割れてしまうことがあり、
その場合は自身で修理せずに歯科医院に行かなければなりません。
特別養護老人ホームなど、高齢者が集まる場所だと入れ歯を紛失させてしまう人がいます。
しかし、入れ歯は製作後半年以内では保険で新品の入れ歯の再製作ができなくなっており、
保険適用のためには何らかの証明書が必要になるなど、市町村によって対応が異なるので面倒です。
入れ歯をアルコールで消毒すると、入れ歯が変形や変質してしまうことがあります。
これはケアにも関係する部分ですが、入れ歯を浸す液体は水にしてください。
ちなみに、上記でも触れましたが熱湯による消毒もアルコール同様に厳禁です。
入れ歯は保険診療ですが、高品質にこだわるならオーダーメイドの入れ歯にする選択肢もあります。
オーダーメイドの入れ歯は自由診療になるため費用が高くなるものの、
保険診療の入れ歯に比べて多くのメリットがあります。
まず装着感の良さで、これはその人のサイズにピッタリと合った入れ歯を製作できるためです。
また、熱を感じにくいという入れ歯の欠点も解消されていますし、
人工歯の白さも幅広く調節可能なため、審美性もこだわったものになっています。
いかがでしたか?
最後に、初めて入れ歯を使う人に向けた注意点についてまとめます。
1. 食事の注意点 :左右の歯で均等に噛む、食材の硬さや大きさに注意する、火傷しやすいので注意する
2. ケアの注意点 :就寝時は外す、外している時は水につけておく、定期的にメンテナンスを受ける
3. 破損や紛失の注意点 :落下させると割れることがある、製作直後の紛失は保険で再製作できないなど
4. オーダーメイドの入れ歯について :自由診療になると高品質のオーダーメイドにする選択肢もある
これら4つのことから、初めて入れ歯を使う人に向けた注意点について分かります。
こうやって注意点を挙げると、どうしても注意点の多さに不安になってしまうかもしれません。
しかしその点については何も心配なく、実際には入れ歯の治療時に歯科医から詳しく説明があります。
逆に言えば、こうした説明をしない歯科医の元で入れ歯治療を受けるのはおすすめできず、
ただ入れ歯を製作するだけでなく、注意点やメンテナンスを大切にする歯科医院で治療を受けましょう。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医