入れ歯とインプラントを比較した時、その特徴から判断すると入れ歯にするメリットはないように思えます。
「失った歯を取り戻せる」、「第二の永久歯」…こうした魅力的な表現はどれもインプラントの特徴であり、
人工の歯としての質を考えると明らかにインプラントの方が長けているのが事実です。
では、歯を失った場合は入れ歯にするメリットは一切ないのでしょうか。
今回のテーマは「インプラントと比較した上での入れ歯にするメリット」です。
入れ歯のメリットを挙げると、そこに共通するのは「手軽さ」です。
費用、治療内容、構造…これらの点において入れ歯はインプラントにはない手軽さがあります。
基本的に健康保険が適用されないインプラントに比べて、入れ歯は健康保険が適用されます。
このため治療にかかる費用には大きさ差があり、インプラントの費用の相場は1本30万円ほどにもなるのです。
総入れ歯となれば費用の差はさらに大きくなり、入れ歯は安い費用ですむという手軽さがあります。
インプラントは治療において手術が必要となり、またインプラントに対応した歯科医院での治療が必須です。
さらに治療期間も長く、その中では経過を観察するための期間も設けられています。
一方で入れ歯にはそのようなことがなく、治療期間や身体の負担が少ないという手軽さがあります。
入れ歯は外れることがデメリットとして挙げられますが、それは構造の手軽さが理由になっています。
インプラントは構造上、不具合が起こった場合は再手術が必要になるケースもありますが、
入れ歯は簡単な構造になっているため修理がしやすく、構造の手軽さはメリットとも言い換えられます。
入れ歯の質をより高めたいと思うのであれば、オーダーメイドの入れ歯にする選択肢もあります。
入れ歯は欠点として装着の違和感、熱の感じにくさなどが挙げられますが、
あくまでそれは保険診療の入れ歯に言えることであり、オーダーメイドの入れ歯なら解消できる問題です。
もちろん不慣れなうちは違和感もあるでしょうが、その人に合ったサイズのものを作れるため違和感が小さく、
また熱を感じやすい仕様にすることも可能です。自由診療になるため費用は高くなりますが、
入れ歯であるため治療内容は変わらず、インプラントのような負担がかかることはありません。
ちなみに、オーダーメイドの入れ歯だと見た目の美しさ…すなわち審美性も向上します。
これは歯の色や歯肉の形状の選択の幅が広がるためで、
入れ歯でもインプラントやセラミックと変わらないほどの審美性の高さを再現できるのです。
入れ歯は毎日のケアが必要のため面倒という意見がありますが、
これについてはインプラントもケアは必要ですし、インプラントではむしろ入れ歯以上のケアが必要です。
確かに、インプラントは外す必要がない分、毎日外す入れ歯に比べてケアが簡単に思えるかもしれません。
しかし、インプラントの場合は細菌感染に充分注意する必要があり、
インプラント周囲炎(インプラントの歯周病のようなもの)になってしまうとインプラントの脱落を招きます。
このため、インプラントのケアが簡単というのは間違いで、定期的なメンテナンスも必要です。
最も、入れ歯も充分なケアは必要ですから、どちらにしてもケアの手軽さを比較することはできません。
入れ歯は入れ歯で毎日外してのケアが必要ですし、
インプラントはインプラントで天然の歯以上に細菌感染に注意しなければなりません。
入れ歯には手軽さというメリットがある反面、デメリットがあることも忘れてはいけません。
その欠点をまとめると「噛むこと」で、インプラントに比べて噛み方や噛む力において劣ります。
まず噛み方ですが、入れ歯は左右均等に噛まないと外れてしまうのです。
いわゆるシーソーの原理であり、一方だけで噛むともう一方が浮き上がってしまいます。
最も、これを面倒と思うかもしれませんが、そもそも左右均等に噛むことは正しい噛み方です。
次に噛む力ですが、おそらくこれが入れ歯の最大の欠点であり、咬合力は天然の歯の1/3ほどになります。
いかがでしたか?
最後に、インプラントと比較した上での入れ歯にするメリットについてまとめます。
1. 入れ歯のメリットは「手軽さ」 :費用、治療内容、構造においてインプラントと比べて手軽さがある
2. オーダーメイドの選択肢 :より質が高く、より審美性が高い入れ歯としてオーダーメイドの選択肢もある
3. 入れ歯もインプラントもケアは必要 :どちらを選択してもケアは必要
4. 入れ歯の欠点は「噛むこと」 :入れ歯の咬合力は天然の歯に比べると1/3ほどになる
これら4つのことから、インプラントと比較した上での入れ歯にするメリットについて分かります。
限りなく天然の歯に近い感覚を得られるインプラントは、それだけ治療も大きなものになりますし、
そこで発生する費用も保険診療のものに比べて高額です。
一方で入れ歯は保険診療であり、その手軽さこそ入れ歯の最大のメリットになります。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医