近年ではインターネットを利用することで、様々な医療知識を身につけられるようになりました。
しかしそれは必ずしもメリットとは言い切れず、場合によっては大きなデメリットとなってしまいます。
と言うのも、その情報が正しくないこともあり、間違った医療知識を身につけてしまう可能性があるからで、例えば「子供の時に矯正すると大人になってから効果がなくなる」の情報もその一例と言えるでしょう。
目次
本当に子供の時に矯正して大人になってから効果が失われたのであれば、その原因として考えられるのは次の3つです。
これは完全に歯科医院側の問題です。
子供の矯正…すなわち小児矯正は第一期治療と第二期治療の2回に分けて行います。
この時、第一期治療の成果次第では第二期治療が不要と判断されます。
しかし、その判断が間違っていた場合、満足する歯並びが完成しなくなってしまうのです。
矯正は治療中だけでなく治療後も大切で、なぜなら後戻りが起こるからです。
そこで、矯正後は保定装置を装着する保定期間を設けて後戻りへの対処を行います。
このため、保定期間を無視してしまうと確実に後戻りが起こってしまうのです。
治療が終わったことで満足し、アフターとなる保定装置の装着を怠ってしまうケースもあります。
歯並びが悪くなるには原因があり、ここで問題となるのは日常生活での癖で歯並びが悪くなった場合です。
例えば、舌で歯を押す癖があると歯並びが悪くなりますが、悪くなった歯並びは矯正で改善可能でしょう。
しかし、舌で歯を押す癖が改善されていなければ、せっかく綺麗になった歯並びは再び悪化。
歯並びが悪くなった原因を解決しないことで、再び同じ原因によって歯並びが悪くなってしまうのです。
上記の問題が起こった場合、子供の時に矯正した歯並びはやがて元の状態に戻ってしまうでしょう。
しかし、間違った治療や対処をしなければそのような事態は起こらないですし、
子供と大人で比較した場合、むしろ子供の時に矯正を開始した方がメリットは多いのです。
いくら矯正でも、歯を綺麗に並べるスペースがなければ治療は不可能であり、
そのため矯正ではスペース作りを目的に抜歯するケースがあります。
特に大人の矯正ではその確率が高いのですが、子供の時に矯正を開始すればその確率は低下。
なぜなら、顎の成長を正常に促しながらの治療が可能なためで、非抜歯で矯正できる確率が高いのです。
上記でも触れましたが、小児矯正では第一期治療と第二期治療の2回に分けて矯正を行い、
このうち大人の矯正同様の本格的な矯正は第二期治療になります。
ただ、第一期治療である程度歯並びが改善されているため、
第二期治療は症例としてそれほど難しくなく、そのため本格的な第二期治療が短期間で終わります。
小児矯正を自ら望む子供は少なく、それは年齢的に審美性を気にしないからです。
一方、大人は年齢的に審美性を気にするため、歯並びが悪ければ矯正を望むでしょう。
しかし、治療期間や保定期間を考えると、理想の歯並びが手に入るまでに時間がかかります。
その点、子供の時に矯正を開始すれば、大人になった時には既に理想の歯並びが手に入っているのです。
矯正は審美目的の治療のイメージが強く、確かにその目的で治療を希望する人が多いでしょう。
しかし、矯正のメリットは口元の審美性向上だけではありません。
例えば、矯正することで虫歯や歯周病を予防しやすくなり、その理由として次のことが挙げられます。
歯並びが綺麗になれば歯が磨きやすくなり、歯が磨きやすくなれば磨き残しが減ります。
そうすれば、歯磨きでより多くのプラークを除去できますし、
歯と歯が重なってプラークが蓄積されることもなく、虫歯や歯周病を予防しやすくなります。
口臭の原因は様々ですが、歯並びの悪さによって起こるケースもあり、
これは口呼吸になってしまうことで乾燥した空気を口の中に取り込むのが原因です。
この場合、口の中が酸欠状態となり、口臭の原因となる嫌気性菌の働きが活発になってしまいます。
ですから、矯正で歯並びを改善すればこのケースにおける口臭は予防できるのです。
いかがでしたか?
最後に、子供の時に矯正すると大人になってから元に戻ってしまうのかについてまとめます。
1.大人になってから矯正の効果が失われるケース:第二期治療を怠った、保定装置を装着しなかったなど
2.矯正は子供の時に開始するのがベスト:非抜歯で矯正できる確率が高いなどのメリットがある
3.「審美性向上」以外の矯正のメリット:虫歯や歯周病を予防しやすくなる
これら3つのことから、子供の時に矯正すると大人になってから元に戻ってしまうのかについて分かります。
間違った治療をしなければ、子供の時に行った矯正の効果が大人になってから失われることはありません。
このため、信頼できる医師のもとで治療を受けられるなら、安心して治療を受けてください。
矯正の場合、大人になってからよりもむしろ子供の時に開始した方がメリットも多いのです。
こばやし歯科院長 小林敦
・1983年 岩手医科大学歯学部卒業
・岩手医大付属歯科病院 歯周病学教室勤務
・TAO東洋医学会会員
・日本訪問歯科協会認定医